高橋美江 絵地図師・散歩屋
窪島誠一郎「ある若い画家への手紙」−信州の二つの美術館から−
もぐら庵の一期一印
金井訓志・安達博文
クラウディア・デモンテ
森田りえ子VS佐々木豊
川邉耕一
増田常徳VS佐々木豊
内山徹
小林孝亘
束芋VS佐々木豊
吉武研司
北川宏人
伊藤雅史VS佐々木豊
岡村桂三郎×河嶋淳司
原崇浩VS佐々木豊
泉谷淑夫
間島秀徳
町田久美VS佐々木豊
園家誠二
諏訪敦×やなぎみわ
中山忠彦VS佐々木豊
森村泰昌
佐野紀満
絹谷幸二VS佐々木豊
平野薫
長沢明
ミヤケマイ
奥村美佳
入江明日香
松永賢
坂本佳子
西村亨
秋元雄史
久野和洋VS土屋禮一
池田学
三瀬夏之介
佐藤俊介
秋山祐徳太子
林アメリー
マコト・フジムラ
深沢軍治
木津文哉
杉浦康益
上條陽子
山口晃vs佐々木豊
山田まほ
中堀慎治


'Round About

第29回 Claudia DeMonte
  (クラウディア・デモンテ)

コレド日本橋のオフィスエントランスに、クラウディア・デモンテのキュレーションによる「Women of the World」展が開かれた。「女性」をテーマに、各国一人の女性アーティストの作品を展示したグループ展で、176ヶ国から作品が寄せられ、7年以上にわたり世界を巡回し、各国の入場記録を塗り替えているエポックメーキングな展覧だ。また今回、銀座・柴田悦子画廊でデモンテ自身の個展も同時開催された。これら2つの展覧と今後の活動についてニューヨーク滞在中のデモンテに尋ねた。
※画像はクリックすると拡大画像をひらきます。   
   
  ●この度開かれた「Women of the World」展では、176ヶ国に上る国々から作品を集めたそうですが、その中には国内情勢の悪化している国もありました。唯でさえ連絡の取りにくい国の、しかも一般人であるアーティストに連絡を取るのご苦労が多かったのではないでしょうか?

この展覧会の準備は1996年頃から始めましたが、初めのうちは、個人的に接触できる人たちに声をかけていました。幸い私は、アーティストとして、また旅人としてこれまで80ヶ国以上の国々を訪れていましたし、大学教授という役職を使って連絡をとったりも出来ました。それが行き詰まると、友達をつてにして、また、インターネットを利用して…とだんだんと範囲を広げて、最後には、*オープンソサエティや、*ピースコープなどの国際的な協会にも手伝っても頂きました。そうして連絡のとれた女性アーティストには、この展覧に興味があるかどうか、作品を提出してもらえるか(今展の出品作はすべて無償で制作された)を尋ねながら、この展覧会に賛同してくれるアーティストを選びました。
 

世界中の多くの国々では、内部になんらかの紛争や困難を抱えています。その為、例えばアフリカのチャドや北朝鮮とは最後まで連絡が取れませんでした。けれど、何より私が嬉しかったのは、176にも上る国々から作品を提供して頂けたという事実です。この展覧会が、世界中で最も包括的かつ、女性によって構成された展覧と記録されるようになったのは、このように多くの参加国を得られたためだと思っています。  ちなみに、本展は2000年に始まりました。私は初め、一つの作品を集めるのに半年はかかるだろうと思っていました。ところが、実際は半年で50ヶ国の作品を集めることが出来ました。その後三年を経て176点の作品を抱えるまでに至りました。  

●初めて作品が送られてきた時の印象はどのようなものでしたか?

一番初めに手元に届いたのは、金属糸で手編みされた「防弾」ベビー服でした。イギリスからの作品でしたが、こちらには簡単には推し量れないけれども、深い深い意味が込められていると感じさせる作品でした。家族、助け合い、顔…いくつかのテーマが一つの作品に込められていることにも興味をひかれました。

 
●では、展覧会に出品された作品の中で特に印象深かった作品などがありましたら教えて頂けませんか?

すべての作品が何物にも代え難く、一人一人の女性アーティストの心から生み出された作品ですのでどれも大切な作品ばかりですが、今思い浮かぶのは、デジタルイメージを使用したアフガニスタンの作品、ハイヒールに繋がれたチェーンとボールが描かれたタイからの作品、夫に足下にひれ伏すブータン女性の作品、夫の期待という籠に閉じこめられた女性を描いたバーレーンからの作品など…一つ一つが素晴らしい作品ばかりです。

それと、パプアニューギニアの聾唖の女性アーティストのことが、強く思い出されます。彼女は絵を描く道具をあたえられて、生まれて初めて自分を表現する事が出来たと言いました。それに、ザンビアの伝統的なビーズ細工や、カザフスタンの刺繍作品もとても好きです…好きな作品は言い出したらきりがありません(笑)
 
 

●日本での展覧は、日本橋にあるメリルリンチ日本証券のオフィスエントランスという一風変わった場所で開かれましたが、この巡回展はどのように続いているのでしょうか?

この展覧は、2000年にニューヨークではじまり現在も世界中を旅し続けています。7年以上にわたって続いているなんてとても素敵ですよね。スウェーデンでは、アートファンから一般の人たちへと噂が広まり、これまでの入場者記録を塗り替えました。アイスランドでは数万人の人に訪れて頂きました! (*巡回展リストはこちら)

 
   

●この展覧を企画する際、デモンテさんは「女性」をテーマとして制作を依頼されましたが、どうして「女性」をテーマに選ばれたのですか?

 

柴田悦子画廊での展示を見ていただければわかると思いますが、私自身の作品は、25年以上に渡り一貫して、現代のステレオタイプ化された女性像をテーマに制作しています。1996年に、チベットのテント工場に滞在しながら、現地の女性達と制作をしていたことがあるのですが、その時チベットの女性たちには私の作品をまったく理解ができないようでした。そのことがきっかけで、自身が抱いている女性のイメージがいかに西洋の思想にもとづくものかを思い知らされました。そこで、世界中の女性達にその国の女性のイメージについて尋ねる様なインスタレーションができたらおもしろいだろうなと思いました。

 

●こうしてみるとデモンテさんにとって「旅」と「女性」というのが、制作活動に大きなインスピレーションを与えているようですが、ではなぜ「旅」に惹かれるのでしょうか?

私は、ニューヨーク市クイーン区のアストリアというところで育ちました。クイーン区は、アメリカ全土でも最も多様な民族が暮らしているところです。そこで私は、こころの広い両親の元で育ちました。両親には、文化や、人種、宗教的分け隔てなくたくさんの友人がいて、それらの人をすべて平等に尊重するようにと教育されました。私の両親は一度も海外に行く機会はありませんでしたが、両親が買い与えて
くれた「*ナショナルジオグラフィック」誌が私の目を世界に開かせてくれました。

 

私はこれまで数十年に渡ってシリーズ作品を制作してきましたが、旅や宗教、女性の日常などシリーズのテーマは変わっていますが、いつでも「女性」を軸に扱ってきました。この数十年、これらのテーマと共に、女性の美しさにも惹かれていました。そこで、最新のシリーズ「リアル ビューティ」では、世界中から集めた手作り人形を使って、グローバル化時代に生まれた私たちをテーマに扱ってみたいと思っています。  

●最後に日本のみなさんへメッセージがあれば御願いします。

展覧会場を見に来てくれた日本の皆さん、暖かく受け入れてくださって有難うございました。また、日本の古代から続く文化がどんなに私を感激させ、作品作りへのエネルギーとなったかを皆さんに知って頂きたいと思っています。
 
(訳:澤田真理子 協力:メリルリンチ日本証券株式会社/柴田悦子画廊
*オープンソサエティ(The Open Society Institute)
民主的な政府や、人権、経済の正常化を進める為に1993年に設立された。地域レベルで、教育や公共衛生、独立したメディア機関の設立をサポートしている。
http://www.soros.org/

*ピースコープス(Peace Corps)
1961年設立。世界73ヶ国で、教育機関や、若者支援、地域活性化を目指しボランティア活動を続けている。
http://www.peacecorps.gov/index.cfm

*ナショナル ジオグラフィック
世界180ヵ国で計850万部発行されている月刊誌。第2代会長グラハム・ベル(電話の発明者として有名)の「未知の地球をわかりやすく伝える」との編集方針のもとに世界一流の写真家が撮影した美しい写真を中心に、地球の自然、人のすべてを伝える多彩な内容の雑誌。(日本語版公式HPより抜粋)
 

Claudia DeMonte 
 (クラウディア・デモンテ) プロフィール
メリーランド大学教授。「現代の女性」に焦点をあてた作品を制作し続け、これまでに50回を超える個展と、300のグループ展を開催した。アメリカ全土の美術館、画廊やタイ、サウジアラビア、イタリア、ブルガリア、ジャマイカ、フランス、日本などで講演している。世界中を旅することでも知られ、訪れた国は80ヶ国を超える。また各国の女性アーティストとコラボレーション活動を展開している。
*公式ホームページ:http://www.claudiademonte.com

*巡回展リスト
White Columns,N.Y.C./June 9-July 15, 2000
Flint Institute, Michigan/September -Nov.2000
University of Maryland/March 2001
Stockholm Sweden/Dec.-March, 2001
University of New England,Me./July 24- Aug 18, 2001
Tucson Museum, Arizona/Sept. 8-Nov. 4th, 2001
Women's Art Gallery,Ohio/April 5th-June 7th,2002
Museum of the Southwest,Tx./Sept. 5-Oct. 27th, 2002
International Museum of Women,SF/March 8-May 31, 2003
Mobile Museum, Alabama/July 25-Sept. 28, 2003
Brenau University,Ga./Oct. 20th-Dec. 5rd,2003
Tallinn Art Hall, Estonia/Jan 23-Feb 22?, 2004
Akureyri Museum, Iceland/March 13th-May 8th 2004
Gerduburg Cultural Ctr, Rejkavik/May 15th- July 1,2004
World Financial Center,N.Y./Jan 11-Feb 15, 2005
Womens Museum,Dallas/March,2005
New Orleans Contemporary Art Center/April 16th-June 19th, 2005
Simmons College,Boston/October 2005
Legion Arts, Iowa/Nov 05-Jan 06
Chicago Cultural Center/Sept -OCT 06
Tokyo/Nov 13,20 06
City Hall, Amman, Jordan/Jan 15-Feb 2007
Acadia Art Center, Lafeytte, La./March 10-April 30th, 2007