高橋美江 絵地図師・散歩屋
窪島誠一郎「ある若い画家への手紙」−信州の二つの美術館から−
坂崎重盛 新刊・旧刊「絵のある」岩波文庫を楽しむ
橋爪紳也 瀬戸内海モダニズム周遊
外山滋比古 人間距離の美学
もぐら庵の一期一印
その19−食は、四川省にあった。(前編)
 *画像は全てクリックすると拡大画面が開きます。
  それぞれ岡村先生のコメントもついています。
 あんなに暑かった夏は、いったい何処へいってしまったのか、この頃はすっかり秋の気配になってしまいました。曼珠沙華の花が、ポツポツと風景の中で朱色のアクセントを与え、澄んだ空気の中を、キンモクセイの香りがどこからともなく漂っています。「夏も終わり、もうすぐ冬が来るんだな〜…。」と、少しシンミリとした気分になってます。
 実は僕、ちょっと前に、芸工大の写生旅行の引率で、中国の四川省の方へ行ってきました。今まで行きたいとは思っていたのですが、中国に行くのは初めてでした。今までにも、行けそうなチャンスは何度か有ったのですが、どういう訳か、チャンスを逸してきました。
 例えば、曾候乙墓(そうこういつぼ)の青銅器や、范寛(はんかん)や郭煕(かくき)の水墨画、考えてみたらその他にも様々な中国の美術に、僕は大きく影響を受けていて、それだけでも本当に魅力的な国なのです。
 それに中国と言えばやっぱり、中華料理ですね〜ッ!本場のチューカとは一体どういうものなのか、やっぱりそこらへんのところが、そうとうに気になるところなのです。
 ということで、初めて行った中国で感じたこと、考えたことなどの話をしようかと思います。
 海外へ行くことの最大の面白さは、何なのかと言うと。日頃の日常を離れることで、今まで気が付かなかった自分を発見するということなのでしょう。まったく違う空気の中で、違う視点で僕たちの日常が見えてくることなのだと思います。
 そしてそれから、たいていどんな所へ行っても、行く前に抱いていたイメージと現実の目の前の風景とのギャップというものは、やっぱりあるものです。それが、ゲンメツに繋がったり、そこのところがかえって面白かったり、思っていたより素晴らしかったりと、それだけでもやっぱり行く価値が有るというものです。そして今回の旅行でも、ごたぶんには漏れませんでした。
 僕にはもともと、中国という国のイメージがはっきりと有った訳ではないのですけれど、それでもやっぱり「アッヒャ〜ッ!」という感じで、まずは躍進する現代中国経済のメザマシサに驚かされてしまいました。
 
 それは何かというと、おびただしい新築の建造物群。この旅行では四川省と重慶市の一部に行っただけなのですけど、ある程度の大きさの町に行けばどこでも、古い家並みはどんどん壊され、ピカピカの欧米風新築マンション群が、幸福な未来をニコニコと見つめながら建ち並んでいるではありませんか。それは、さながら日本の郊外の「ナントカ・ニュータウン」と言われているような家並みとオーバーラップする風景でもあるのですが、その規模の巨大さと爆発的なスピード感は、日本のそれとは比べる由もなく、国家的戦略とはこのようなものなのかと、ただただ感嘆するばかりでした。あと何年かすると、中国じゅうの町並みは、どこへ行ってもこのように欧米風のマンション群が建ち並ぶ風景になってしまうのでしょうか?日本もまた同じ道を歩んでいるとは思いますが(新しい町は、どこへ行っても同じような景色なのです。)、普通の旅行者である僕としては、人々の生活の匂いを感じたり、その土地特有の空気を吸いたくて歩いているので、少し寂しい気もします。
 今はまだ、広大な中国の青空の下で、ポッカリと空虚に広がるこの景色も、いつの日か、中国の人々の旺盛な生活力によって、独特な匂いを醸し出していって欲しいものだと思うのでした。
 
 旺盛な生活力と言えば、この場合、食欲の事なのですが、中国の人々のそれは、やっぱり凄まじいものがありました。ガイドをしてくれた四川省の成都出身の羅さんは、「四川省の人は、『食は四川省にあり』というのです。」「中国では、四つ足のものは、テーブル以外何でも食べます。そして、空を飛んでいるものは、飛行機以外何でも食べるのです。」と僕たちに教えてくれたのです。
 僕たちは、大学が連れて行く団体旅行ということもあって、かなりリッチな食生活を送っていたのですが、日本ではなかなか食べないものも食べていたように思います。兎や鯰、草魚、蚕のさなぎ、血を寒天で固めたもの…。いろいろと食べさせてもらいましたが、僕的には、けっこう気に入ってました。
 四川の食べ物は、辛いものと辛くないものがありましたが、辛いものは大量の唐辛子といっしょに、山椒がこれまた大量に入っていて、辛く、そしてシビレル味なのです。食べていくうちに舌がシビレてきて、味の方は、なにがなんだかわからなくなってくるのですが、僕としては、味わうという以上に、食への好奇心に突き動かされた「食のチャレンジャー」として、ともかくなんでも食べてみたのでした。あくまでも僕個人の気持ちの問題ですが、それは僕にとって戦いの場であったと思うのです。








   
 
【インフォメーション】
10月7日から河口湖ミューズ館 与 勇輝 館で「岡村桂三郎作品展」が開催されます。お近くにお出かけの際は、ぜひお立ち寄り下さい!

 
展覧会名 岡村桂三郎作品展
会場 河口湖ミューズ館 与 勇輝 館
 山梨県南都留郡富士河口湖町小立923 八木崎公園
 tel:0555-72-5258
 http://www.musekan.net/
会期 2006年10月7日(土)〜2007年3月21日(水)
*毎週木曜日・年末休館
時間

9:00AM〜5:00PM *入館は4:30PMまで


© Copyright Geijutsu Shinbunsha.All rights reserved.