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 いやはや、どういう訳なのだろう。作品というものは、搬入直前にならないと、なぜか出来てこないものなのだ。今までに展覧会の搬入の数日前に既に完成し、余裕で作品を出品できた記憶が無い。いや、正確に言うと一度だけ有るには有るのだけれど、その時は僕が搬入日を間違えていた時だった。だからその時も、自分の思い込んでいた搬入日にはぎりぎりだったはずなのだ。
 搬入日を間違えると言えば。去年の個展の時は、3週間位まえになって初めて、自分が信じていた会期より本当の会期は1週間早いことに気付いて、大慌てだったのを思い出した。いや〜、今思い出しても、あの時は本当にツラかった!


《何羅魚》展示風景

 
芸大で助手をしていたころ、とある先輩が、「搬入前には、作品に佳い音楽を聞かせてあげるのだよ。」と言って、いつも自分の研究室でクラシックなどをかけながら、作品の前で悠然と(少なくとも僕にはそう見えました。)寝そべっていたのを思い出す。本当にウラヤマしい。どうしたら、ああいうふうに絵が描けるのだろう? と言う訳で、今回の個展も例外ではなかった。時間と体力の限界との果てで、絶望とポジティブ・シンキングとの「戦い」だったのだ。僕は、同じ過ちを、何度繰り返せば気が済むのであろうか。
 しかし、そんな愚かな人間のまわりには、いつも心優しい人々がいて、そういう人々に助けられ、ささえられながら、なんとか個展開催にこぎつけられたのだった。皆さん、本当にありがとう。


《白澤》展示風景
 
《鳥》展示風景  作品は僕の日常の経験の中から生まれたイメージを作品化していったものですが、今回の作品は去年の個展の時よりも、更に大きく巨大になりました。パネルも厚くなり、重量感が増したように思います。それらによって、特に今回の会場の特長になっていることなのですが、展示空間が絵画の展示というよりは、よりインスタレーションされた展示空間になったということなのだと思います。作者としては、ある程 度意図してやったことなのですが、予想以上に面白い効果があったように思います。地下に降り、画廊に入ると、まるで洞窟の中に居るような感覚を味わうと、来場された多くの方々に言われました。

 ところで、作品自体としては、僕はあくまでも絵画として描いているのですが、個展会場では、その断片としてしか観ることが出来ず、来場された方々は、そのインスタレーションに、一体どういうものが描かれているのか、想像してもらうしかありませんでした。そこで、この場を借りて、写真によって、その姿をお見せしたいと思います。



《何羅魚》

《鳥》
 

《白澤》

 しかし、そのスケール感や素材感は、やっぱり本物を見ないと分からないとは思います。どこかでいつか、今回の作品を、絵画としての機能を持たせながら、展示ができる機会があればいいなぁと、思います。どこか、展示をさせてくれる所、ないですかねぇ?


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