高橋美江 絵地図師・散歩屋
窪島誠一郎「ある若い画家への手紙」−信州の二つの美術館から−
坂崎重盛 新刊・旧刊「絵のある」岩波文庫を楽しむ
橋爪紳也 瀬戸内海モダニズム周遊
外山滋比古 人間距離の美学
もぐら庵の一期一印
その17−ガンバレ、学長!! 負けるな、テッチャン!!!

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 季節がかわるのも早いものです、山形では4月の中旬にはまだ雪が降ったりして、うっすら雪化粧をしたりしていたのですが、その後、突然のように春がいっせいにやってきて、アレヨアレヨとしてるうちに、もう5月も終わりではありませんか、緑も深くなってきました。
 しかし、どうしてなのでしょう?春がやって来てどんどん暖かくなってくると、どういうわけか、ウレシイ。歩いていても、どこか浮き足立っているし、顔だって、気が付くとだらしなくニヤケ顔になってしまっている。顔については、特に春だけに言えることではないのかも知れないけど、やっぱり春になると、体全体に、デレデレ〜っとした気分がみなぎってくる。
 「岡村君。最近の君は、眼に力がないぞ。作家たるもの、そんな事でよいのか?見てみろ、絹谷幸二さんの爛々と輝くあの眼を!!」と、アートアクセスのシゲノさんからも叱られてしまったりしています。どうしてこのような気分になってくるのか、こんど小松先生芸工大の心理学の先生)に会ったとき聞いてみよう。
 まあ、どちらにしても、こういうデレデレ〜ッとした気分は、本質的に僕が日頃から追求している精神状態に極めて近いものであると直感的に感じ取れるものであり、こういう精神を一年中意識化し、四季がうつろう度にポケ〜と過ごせれば、僕は本当に幸せな人間になれると思うんだけども…。
 4月も終盤に差し掛かると、越生の山々のあちらこちらの山桜たちも満開になり、芽吹きの山々の、広葉樹林の淡い色調と針葉樹林の深く濃い色調、その組み合わせの中に、サクラ色があちらこちらに顔を出し、あるところはポイントになり、あるところでは淡くとけあいハーモニーを作っています。仕事の合間の気分転換に、そんな風景を探しに、カミさんとおにぎりを持って、越生の山の中へ出かけたりしてました。
 そして、山形は山形で、梅も桜も満開で、足下を見れば見たで、小ちゃな花々がいっせいに咲き誇っているではありませんか。これはどうしたって、デレデレ〜っとした気分になってきますよ。いや〜、やっぱり、春はよいですなぁ〜、デレポケ〜〜〜……としている間に…、気が付くと、春は終わってしまっているではありませんか。イカンイカン…。
 さて、春と言えば、松本先生。どうして松本先生かと言うと。春と言えば、桜。桜と言えば、花見。花見と言えば、酒。酒と言えば、やっぱり松本先生。と、僕の中ではハッキリとしたツナガリがあるのですが。実は、僕の今までの人生(たいして長くはない人生ですが)の中で、お世話になった松本先生というのは、3人いらっしゃるのです。そして、その3人が3人とも、どういうわけか不思議なことに酒が大好きなのです。それは、「マツモトセンセー」という言葉に密かに潜む呪縛なのでしょうか?
 
 まず、最初は学生時代に教育実習でお世話になった松本優治先生。その後ご無沙汰してしまって、お会いしてはいないのですが、どうしてるのかなぁ〜…?先生はそのころ、今の僕よりずっと若く30歳そこそこだったのだと思うのだけれど、48歳にもなった僕の心に、未だに大きく影響を与えてくれている先生なのです。教育実習の時間が終わった後、毎晩近所の飲み屋を飲み歩いて、いろいろな話を聞きました。「自分以上ではなく、自分以下のものでもない、自分自身を表現するんだ。」と、おっしゃっていらしたのを覚えています。その言葉は、今でも僕の心の中のいちばん真ん中のところにいつも在ります。作家として生きて行く覚悟を学んだのだと思います。僕は未だに学生達に向かって、このセリフを言い放っています。  
 そして、女子美の松本俊喬先生。今でも女子美には、非常勤講師として年に数回通っているのですが、そこでお世話になっています。十年前、女子美へ通い始めた頃、その頃は週に一度は通ってたのですが、女子美からの帰り道、必ず松本先生と一緒に居酒屋のお世話になっていました。楽しかったなぁ〜。
 時には女子美の学生達と、時には松本先生の行きつけの飲み屋で、二人でじっくり。先生の周りにはいつも、何事にもとらわれない自由な気分が漂っていて、人の悪口(陰口)を決して言わない、いつまでも若々しく楽しい先生です。
 「B型の末っ子」というのは僕と同じで、なんだかとても気が合うのです。先生も僕に、言いたい事を言うけれど、僕も先生に(実は誰にでも)、言いたい事を勝手に言って、いつも盛り上がってました。来春に定年で退職されるということが信じられないし、ちょっと寂しいけど、肩の荷が下りたら、先生らしく飄々と次の人生を楽しく生きて行くのだと思います。なんだか理想的な人生なのです。僕も、先生のように生きていきたいなぁ〜。まだまだこれからも、一緒に酒が飲めると楽しいなぁ〜。ヨロシクお願いしまぁ〜す。  
   

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