高橋美江 絵地図師・散歩屋
窪島誠一郎「ある若い画家への手紙」−信州の二つの美術館から−
もぐら庵の一期一印
2005
2006
2007
金井訓志・安達博文
クラウディア・デモンテ
森田りえ子VS佐々木豊
川邉耕一
増田常徳VS佐々木豊
内山徹
小林孝亘
束芋VS佐々木豊
吉武研司
北川宏人
伊藤雅史VS佐々木豊
岡村桂三郎×河嶋淳司
原崇浩VS佐々木豊
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'Round About


第40回 原 崇浩 VS 佐々木豊

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:まさしくそうですね。たぶんベラスケスがやっていることもそういうことだと思います。ロペスからはよく、ものを見てその中から自分の色と形を探せと言われました。別に細かく描かなくてもリアリズムだと思います。
佐々木:日本の場合はどうしても表面の細密に行っちゃう。
:ロペスの叔父さんにアントニオ・ロペス・トーレスという人がいるんですけれど、その人は、肉眼で見てすごく単純化した風景画ばかり描いている。ロペスの絵はその人の影響をすごく受けている。オーソドックスで地味な絵なんですけれど、筆を置くまですごく考えているし、緻密な作業なんだけれど細密じゃない。ああいうのができたらいいな、と思いますけれどね。
 
佐々木:リアリズム絵画はともするとみんな同じように見える。それでもなおたくさんの作家が我慢強く、ストイックにリアリズムを追求する理由はなんだろう。
:写実だからというわけではなく、絵を描いている以上は、我慢強くなるし、ストイックになることもあるんじゃないですか?ただぼくの絵は、バックを相当省略したり、色にしても作り変えているんです。本当らしく見せるために、大嘘をついているところもある。目標があって、そこに突き進んでいくと、描いている過程ではじめに見えていなかったものが出てくることもたくさんあります。直感して描き始めて、描きながら感動を分析するうちに見えてくるものもあります。
佐々木:大嘘をやる?
:大嘘というより、取捨選択ですね。
 
伝達手段の統一
佐々木:写真が生まれて、社会的にリアリズム絵画の大部分は引き継がれた。写真にはないものが自分の絵にはあるんだということを明快に説明出来ないとね。ひとつは絵肌だね。写真にはない魅力は。
:「写真には絞り込めない、純化=絵画性」ということがありましたが、スペインの作家との会話のときに良く使われていた言葉に「unico lenguaje=唯一の言葉」というのがありました。まさしく作者の目を通した純化の意、さらにともうひとつの意としては「伝達手段の統一」とがあります。作者の独自のスタイルで統一感のある空間、絵肌もこの中に含まれますね。
 
それを作り出すことの重要性を言っています。残念ながらぼくは今まだ、どちらも模索の段階でまだその入り口にも立っていません。そのことで少々焦りもあります。
佐々木:これから原さんの独自性を強く打ち出すには、これまで誰も描かなかったものを題材に取り上げるとか、独特の視点や構図を考えるとか。描写力や技術は抜群なんだから。
:考えているものはあります。でも焦っているからといって自分の範疇を超えて奇をてらうような無茶をするつもりもありません。特に刺激的なことでなくても、作者が変わったものを変わった風に面白く並べなくても、人ひとりの内に、切り取った景色の中に不思議はあふれています。とにかくぼくはこれからです。
 
 
(2007年9月 京都・蔵丘洞画廊にて取材/アート・トップ218号より抜粋)
 
  
原 崇浩(はら たかひろ)
1971年広島県福山市生まれ。94年金沢美術工芸大学卒業(卒業制作金沢市買上)。95年より国画会展出品(98年、02年新人賞受賞)。96年同大学大学院修了。97年青木繁記念大賞公募展大賞受賞。98〜00年国立マドリッド・コンプルテンセ大学美術学部在籍。01年蔵丘洞画廊で個展(03年、05年、07年)。04年国画賞受賞、準会員推挙。同上コンプルテンセ大学美術学部再留学。05年 アントニオ・ロペスの夏期講座受講。国画会準会員(2010年現在は国画会を退会されています)。
 
●information
■作品集刊行記念 原 崇浩展
2007年11月1日(木)〜11月20日(火)*水曜休廊
蔵丘洞画廊
京都市中京区御池通寺町東入ル 本能寺文化会館1F
Phone:075-255-2232
http://www.zokyudo.jp/

『原 崇浩作品集1995-2007』
3,800円(税込)。発行=蔵丘洞画廊
カラー64頁、モノクロ16頁、作品77点収録。
  

 

佐々木豊(ささきゆたか)
1935年(昭和10年)名古屋市に生まれ。
愛知県立旭が丘高校美術科、東京芸術大学油画科、同専攻科卒業。1992年、第15回東郷青児賞を受賞。国画会会員、講談社フェーマススクールズアドバイザー。
主な著書に「浮気な女たち」「構図と色彩」「はじめてのクロッキー」、「絵に描けなかった絵の話」・「泥棒美術学校」「画風泥棒」・そして待望の最新刊「プロ美術家になる!」が 2008年4月に刊行。(芸術新聞社刊)「佐々木豊画集−悦楽と不安と−」(求龍堂)など多数。