高橋美江 絵地図師・散歩屋
窪島誠一郎「ある若い画家への手紙」−信州の二つの美術館から−
もぐら庵の一期一印
2005
2006
2007
金井訓志・安達博文
クラウディア・デモンテ
森田りえ子VS佐々木豊
川邉耕一
増田常徳VS佐々木豊
内山徹
小林孝亘
束芋VS佐々木豊
吉武研司
北川宏人
伊藤雅史VS佐々木豊
岡村桂三郎×河嶋淳司
原崇浩VS佐々木豊
泉谷淑夫
間島秀徳
町田久美VS佐々木豊
園家誠二
上條陽子
山口晃vs佐々木豊
山田まほ


'Round About


第35回 束芋 VS 佐々木 豊

※画像はクリックすると拡大画像をひらきます。
 
   
束 芋:アニメーションを使ったインスタレーションは観客を引っ張り込む方法です。ただの絵空事を椅子に座って五分間観て下さいと言ったらそれは絵空事かもしれない。同じ意味かもしれないけど、私はからっぽの器という言い方をしています。その器に観客が食べたいものを盛る。そこに何を盛ってどのように食べるかということに私は興味があり、全て実験なんです。私が第一の観客になるわけですが。もちろん自分自身に対しても同じように興味をもっています。
佐々木:もしあなたが写実的なデッサンの名手だったら、リアリズムで描きますか。
束 芋:それに執着してしまうと思います。人に見せなくてもいいと思うかもしれない。でも今はこれでしかない。
 
  佐々木:ダリは絵空事を説得するために、本当にこういう世界があるようにリアルに描いた。こんこんとわき出るようにイメージをつむぎ出すあなたがこんなチャチなところで満足していいのかと思ってしまう。
束 芋:アニメーションに入った当初はマイナスの理由もありましたが、色付けをしたり画面を三面にしたりと空間を創っていくと、マイナスがプラスに転じて、結局今、来るべくして来た段階だったという気がしてます。
佐々木:現代美術のちっぽけな実験室から飛び出て、あなたにはメジャーになってもらいたいんだ。大人まで巻き込んでね。絵空事に飽きて映画作りに行くとか。
 
束 芋:佐々木さんが絵空事だと思う距離感が、私にはリアリティを感じない世界観なんです。
佐々木:首をちょん切られる絵がありましたね。あれ一つとっても、映像だったらもっと衝撃がある。
束 芋:私の学生時代、全てのクリエイティブ作業をデジタル化させる時期だったので、ものの質感や印刷物の色に接することができたぎりぎりの世代でした。だから、地に足の着いた色には、感覚的に惹かれるものがあり、私にとってアニメーションは絶妙な場所にあるんです。今の私の作品は、フィルムでは出来ない部分を一つずつ選択してきた結果としてできあがっているので、私はアニメーションで写実的なものを描くということには全く興味がありません。ぎこちのないアニメーションの世界だからこそ出来ることがまだあります。写実がその上のレベルにあるものでは決して無いんです。
 
一生続けろと言われたら辞めます
佐々木:海外からも盛んにお座敷がかかり、メジャーになれるのにもったいない。
束 芋:そんなことないです。マイナーだからこそ出来る面白さがあります。
佐々木:自分でマイナーだと思ってる?
束 芋:思ってます。世界を変えようと思ったことは一度もありません。たくさんの人に見てもらいたいけど、全員に見てもらいたいかと言えばそうでもない。創ることが気持良いわけではなく、観客の一人としてこりゃいいわと思えるものが出来た時の喜びが忘れられなくて、ついつい次もつくってしまう。ですから、ひと作品ごとにやっと出来たという感じです。一生続けろと言われたらもうここで辞めます。
佐々木:あふれるほど才能がおありなのに、狭い世界で満足しているのが何ともはがゆい。おじさんから見るとね。
 
ギャラリー小柳にて取材/アート・トップ216号より抜粋) 
 
  

 

束芋(たばいも)
1975年 兵庫県生まれ
1999年 京都造形芸術大学芸術学部情報デザインコース卒業
1999年 個展「にっぽんの台所 束芋展」
1999年 (立体ギャラリー射手座 ・京都)
1999年 「キリン コンテンポラリー・アワード1999 受賞作品展」
1999年 (キリンビール新川本社・東京、キリンプラザ大阪・大阪)
2000年 「オ−バ−ハウゼン国際短編映画祭」(ドイツ)
2000年 「キリン コンテンポラリー・アワード '99
2000年 最優秀作品賞受賞記念展」(KPOキリンプラザ大阪)
2001年 「横浜トリエンナーレ2001−メガ・ウェイブ新たな
2001年 総合に向けて」(横浜)
2002年 第13回五島記念文化賞美術新人賞
2002年 「第25回サンパウロ・ビエンナーレ 大都市の
2002年 イコノグラフィー」(サンパウロ、ブラジル)
2003年 個展「束芋:夢違え」ハラ ミュージアム アーク(群馬)
2002年 個展「束芋:おどろおどろ」東京オペラシティ
2002年 アートギャラリー(東京)
2005年 第12回日本現代藝術奨励賞
2006年 「第15回シドニービエンナーレ Zones of Contact」
1993 (シドニー、オーストラリア)
2006年 「ヨロヨロン 束芋」(原美術館)
2006年 「TABAIMO」(カルティエ現代美術財団)など
2006年 国内外の展覧会に参加。
2007年 第52回ヴェネツィア・ビエンナーレにイタリア館より出品
 
  

 

佐々木豊(ささきゆたか)
1935年(昭和10年)名古屋市に生まれ。
愛知県立旭が丘高校美術科、東京芸術大学油画科、同専攻科卒業。1992年、第15回東郷青児賞を受賞。国画会会員、講談社フェーマススクールズアドバイザー。
主な著書に「浮気な女たち」「構図と色彩」「はじめてのクロッキー」、「絵に描けなかった絵の話」・「泥棒美術学校」「画風泥棒」・そしてこの対談も収録されている待望の最新刊「プロ美術家になる!」が 2008年4月に刊行。(芸術新聞社刊)「佐々木豊画集−悦楽と不安と−」(求龍堂)など多数。