高橋美江 絵地図師・散歩屋
窪島誠一郎「ある若い画家への手紙」−信州の二つの美術館から−
もぐら庵の一期一印
※画像はクリックすると拡大画像をひらきます。
 
vol.19「N.Y.アルバム」  
 前回vol.18ではACAF NY出展の模様をお伝えしました。世界同時不況のこの御時世、なんだかんだ言っても売り上げが振るわないと文章もいまひとつ華やかさに欠けるもので……。

 さて、今回はそんな暗い話題からパッと気分を切り替えて、ニューヨーク滞在中のスナップあれこれをご紹介。
 歴史的な不況とはいっても、やっぱりニューヨークはパワーを感じる街です。
 以下、お楽しみ下さい。


 
 
 訪米初日は睡魔をこらえて、買い物などで時差を消化。“ニューヨークの世界堂”パール・ペイント(PEARL PAINT)へ。マンハッタンで大きな画材屋さんといえばココくらいらしい。世界のアートの中心地なのに、何だか不思議。  
 
 翌日、すっかり予定のくるった2日目。チェルシーのギャラリー廻りへ予定変更。
 まずは、かの有名なGAGOSIAN GALLERY。ちょうどこの日は、翌日から始まる杉本博司展の準備の真っ最中。長年木材の仕入れでお世話になっている山口製材の山口社長から、以前杉本さんを紹介して頂いた事があり、そんなご縁もあって図々しくも表敬訪問に伺ったら、なんと杉本さんご本人が気さくに会場内を案内して下さった。
 
 セント・パトリック大聖堂(St. Patrick's Cathedral)。現代のクールな建築との対比に、時空を超えたような不思議な気持ちになる。地震のない街、各時代の建築物が自然に共生していて、ニューヨークの歴史全てを感じる事が出来る。そういえば京都でも似たような気持ちになった事があったなぁ。  
 夜はエンパイア・ステート・ビル(Empire State Building)へ。特に予定に入れていなかったのだけれど、夜、皆と解散した後ファーマシーに寄り道したら、たまたまその真上がエンパイア・ステート・ビルだった。で、12時近いというのにまだチケットを売っていたので、そのままフラフラと観光客の列に。絶景に感激。やっぱり登って良かった。日本の友人からの応援メールにはここからの写メでお礼。  
 
 5日間のフェアが終わった後はそれぞれ自由行動。僕は13年間憧れ続けていた念願のアメリカ自然史博物館(The American Museum of Natural History)へ。
 その膨大な展示物の数とスケールに、ただただ圧倒される。で、その日予定していた他の観光はもうどうでもよくなり、1日ここに居ることに決定。
 
 ニューヨーク滞在もいよいよ残すところあと僅か。帰国前日は時差と疲れで乗り物にひどく弱くなってしまった。運転の荒いニューヨークのTaxi なんてもってのほか、しまいには地下鉄でも酔う始末。けれどクルマ好きの妙なところ、コーディネーターさんのクルマをお借りして自分で運転させてもらったら、ケロッと爽快に。
 そして郊外までドライブへ。気持ちいい。
 
 最初に立ち寄ったのがメトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)の別館「THE CLOISTERS(クロイスターズ)」。ここは中世のロマネスクからゴシック時代の教会建築をそのまま再現し、その中に一歩入った途端、まるでタイムスリップしたような感覚に陥る。  
 次に立ち寄ったのがユニオン教会(UNION CHURCH)。ここはロックフェラー家が建てた教会だそうで、教会内正面のステンドグラスはなんとマティスが制作したモノ。そして、それに感銘を受けたシャガールが両サイドのステンドグラスを請け負ったという、なんだかモノ凄い教会なのです。まさに“巨匠☆夢の饗宴”状態。  
 ユニオン教会のほど近く、ストーン・バーンズ(Stone Barns)という農場。マンハッタンから北に車で1時間ほどのウェストチェスターにあり、ロックフェラー家が百年近く所有してきた4000エーカー(山手線の内側の4分の1強!)もの広大な土地は、現在その大部分が州立公園になっているのだけれど、その州立公園の隣に、ロックフェラー家の農場がある。その農場は数十億円かけて改修され、現在「Stone Barns Center for Food and Agriculture」という、農業の研究・教育センターとして一般公開されている。
 UNION CHURCHといいStone Barnsといい、ロックフェラーってスケールでかすぎ。
 
 この日最後の目的地、ハモンド・ミュージアム(Hammond Museum)は、もともと個人の邸宅で、現在はニューヨーク州が管理しているという小さな美術館。地元の日本通が集まるコミュニティーとしての役割もかねているとの事で、なかなか温かみのある気さくな美術館だ。今年、ここのエントランスを使って、大森暁生の作品展示が実現するかもしれない。詳しくは、追ってまた報告したいと思う。  
 こうやって写真をまとめてみると、今頃になって「ほんとにニューヨークで個展してきたんだな」なんて実感がこみ上げてくるもので。
 きっと、今度ニューヨークで発表が出来る頃には、オバマ新大統領が新しいアメリカを創り上げている事だろう。


 「夜 まさに明けなんとし ますます暗し」

 この言葉、自分の名前「暁生」と通じる事もあって、実は座右の銘だったりします。次の時代に恥じぬよう、今の自分ももっともっと良い作品を創って、それに備えないとな。

(2009.02.19 おおもり・あきお/彫刻家)