贈答品の丁寧な包装はむろんのこと、菓子類などもちょっと高級品になると煎餅でも一枚一枚包むというように、日本には包むことをことのほか大事にする奥床しい伝統がある。
書店カバーではないが、私は京都の数ある銘菓のなかでも、とりわけ味噌製カステラというべき「松屋常盤」の味噌松風を偏愛し、それが名店街やデパートなどでは手に入らないため、上洛した折には時間の許す限り、江戸初期承応年間創業の御所出入りであった同店に必ずといってよいほど足を運んで購入することにしているが、この老舗の包装紙がまたすごい。装画などの意匠はいっさいなく、筆で職掌と店名、場所を記しただけの直截簡明さ。けっして達筆といえないけれども、今もって「平安京」としている地名表記などに、幾多の星霜を乗りこえてきた老舗の矜持がにじみ出ている。
包む文化と深く交錯する文字。そして、包み紙が美しい書き文字や図案文字で彩られ、ことほがれていれば、なおのことうれしくなる。
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