今日もケイタイデンワで みんな 虫になっていく 虫になってみる 虫の思想の羽音が 青い闇の沸点を突き抜け
「言葉が電磁波とともにフルエルノダ」
世界がカオモジで記載される夜に私は君とどの地点で待ち合わせよう? (水無田気流「電球体」)
このほど第十一回中原中也賞を受賞した水無田気流さんの詩集『音速平和』(思潮社)の一節である。一九七〇年生まれの詩人は、IT機器に囲繞されて生きる現代人の日常感覚をたくみに掬いとっている。
たしかに電車に乗ってもケータイ(ケイタイ)と一心不乱に「ご対面中」の人がやたらと目に付く。いまやすっかり定着した光景である。ケータイは所有者にとってまるでハンディな現代の「神器」のようだ。私はケータイを持たない旧人間ではあるが、その利便性を否定するつもりはない。いろんな情報を発信でき、また、たやすく手にすることができる「玉手箱」であるからこそこれほどに普及したわけだから。
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