この春、初めてニューヨークに行ってきた。現地で三泊のみ、丸一日動けたのは二日間という超短のスケジュールだった。旅の目的のひとつに、ハーレム地区のグラフィティ(落書きアート)のメッカ「グラフィティ・ホール・オブ・フェイム」(グラフィティの殿堂)を見ることがあった。マンハッタン島の北寄り、東百六丁目通りとパーク・アベニューが交差する一画にその殿堂はある。そこはアフリカ系もしくはスパニッシュ系アメリカ人が多く居住するハーレムの東南端部分に位置し、作品発表の場として解放されている。
作品はコミュニティセンターである建物(元は中学校)の外塀や壁面、コンクリートで固めた内庭の壁などを隙間なく埋め尽くしていた。年一回、六月にアーティストたちが集まってイベントを行うのだという。いくつものブロックに分かれて、カラフルかつダイナミックで、固有の力強い描写が連続している。しかも、それぞれが完結した世界を誇示しながら、謎めいた神秘性をたたえていることでは共通している。文字(アルファベット)も読めそうでいて読めないものが多い。しかし、わずかながら判読できるものもある。
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