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端からは比較的「行動力のあるタイプ風」に見られるのだが、案外これが相当な出不精。さらには海外旅行となると、もうからっきしダメ。何より言葉が話せないし、何をするにも勝手が分からないのでイライラする。愛想笑いなんか嫌いなのに、愛想笑いも出来ない外国人には腹が立つ。ホイホイ海外へ遊びに行ったり、海外生活をしている友人達に対して「危険に対する想像力の欠如」と屁理屈をこねてみても、内心、その行動力と勇気には頭が上がらない。 |
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そんなだから今まで行った海外といえば、その昔籔内佐斗司先生のアシスタントをしていた頃に展覧会の準備などで行ったナイアガラとニューヨーク、そしてパリ。あとは親友に誘われ「それならば……」と出かけたハワイ。そんな程度。自ら進んで出かけた海外旅行など一度もないのだ。けれどそのくせ行ったら行ったで、いつも誰よりも興奮して楽しんで帰ってくるので、いつかはこの海外への苦手意識を変えたいとも思っている。何より自分の世界を広げることは、創作を続けていく上で不可欠だし大きなプラスになる事も重々分かっている。 |
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そんな厄介な自分が先日ニューヨークへ行って来た。実に11年ぶり、2度目のニューヨークである。今回の目的は「ACAF NY(アジアン・コンテンポラリー・アートフェア・ニューヨーク)」の視察と、チェルシーなどニューヨークで現在もっとも勢いのあるというギャラリー街の状況を見てくる事だ。もちろんこれは今後海外での発表を見据えたもので、仕事となればもう苦手もへったくれもない、行くしかないのである。 それにしても飛行機というものは……。とにかく約13時間座りっぱなしというのはゾッとする。徹夜明けなどは、それこそ半日くらいはグーグー寝てしまうくせに、フライトの13時間は何故に永遠とも思えるほど長いのだろう。せっかちな自分には耐えがたい時間が延々と続く……。 |
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けれどフライト中、唯一楽しみにしていた事がある。それは、以前アメリカに行った際、アラスカ(あたり?)の上空から見た、氷河が太陽に染まって宝石のようにキラキラと輝く荘厳な景色……。それが頭に焼き付いて忘れられず、今回も必ず見ようと心に決めていた。アラスカあたりを通過する頃、機内はちょうど就寝時間だったので窓は全部閉めているのだけれど、コソッと隙間を開けて覗き込む。前回とは時間が違ったのだろう、今回は太陽が昇る直前のシンとした怖くなるような蒼白い景色……。「もしここに取り残されたら……」と想像するだけで凍り付くような恐怖が襲ってくる。そんな絶景が広がっていた。これを見る事が出来ただけで、13時間を我慢した価値もあったというものだ。 |
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ようやくジョンF.ケネディ空港に降り立ち、マンハッタンへ向かう車中では、「あぁ、やっと着いたなぁ」なんて感慨はどこかへ消え、あたりまえだがそこら中を走り回っているアメ車が嬉しくて仕方がない。一体何をしに来たんだか……、これだからクルマ好きは困ったものだ。そしてふと車の窓から外を見るとひしめき合うように立ち並ぶアパートなどの建物から漏れる窓明かり。柔らかいオレンジ色。そう、蛍光灯の冷たい光ではないのだ。それだけでこんなにも日本の街並みと雰囲気が変わるものかと感心した。 |
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ホテルに着いたのは夜の8時くらいだったろうか。小腹がすいたのでタイムズ・スクエアまでふらふらと散歩。あれほどビビっていた海外も、いざ来てしまえば不安よりも食い気が優先、そんなもんである。ジャンク(!)なステーキ屋で食事を取り、12時頃にホテルに戻ってあっという間の初日が終わる。
(2008.01.18 おおもり・あきお/彫刻家)
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