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世の中にはそれこそ星の数ほどの職業があるわけで、自分が生業としている「彫刻家」とて、それほど特別なものとは思っていない。けれど自分の人生で、この仕事をしていなかったら絶対にあり得なかったであろう出会いというものもある。
20代の頃は、幸い作品に買い手が付いても、とても嬉しい反面、手放すことがひどくツラく、「こんな事ではプロになんかなれないのでは……」と真剣に悩んだこともあった。それはきっと、作品を手放すということが幾ばくかのお金との交換にすぎないと思っていて、その収入もいずれ使いきってしまえば作品そのものまで消滅してしまうかのような錯覚をしていたからであろう。
けれど30代に入った頃から、気付くと自分のまわりにはたくさんの魅力的な人達が居て、今までの作品というのは彼らとの出会いと引き替えにしてきたのだという事を徐々に身にしみて実感し、それからは作品を手放す事がまったく苦ではなくなった。
今回は、そんな出会いから生まれた仕事の話しである。 |
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