高橋美江 絵地図師・散歩屋
窪島誠一郎「ある若い画家への手紙」−信州の二つの美術館から−
もぐら庵の一期一印


   
 ●第1回●
  今日は、大阪で2月にある展覧会の荷物を引き取りに来てもらったので、作業場がすっきりしました。年末の大掃除もさぼっていてごちゃごちゃだったので、久しぶりに片付けてきれいにしました。そこでこの日記を書いています。
 大学に入って美術の勉強を始めて8年経ちますが、日記をつけたことはありません。反省ばかりで、日記に書くようなことはたくさんあったと思いますが、なぜかそうしませんでした。気を落ちつけて考えるゆとりがなかったのかもしれません。もしくは、もしつけるなら、どんな日記帳にしようかな……と思いつつ、イメージにあうノートが見つからなかったようにも思います。
 私は、かばを作っています。これを読んでくださる多くの方にとって初対面だと思いますが、年に何回か展覧会をしたり、コンクールに出したりしています。といってもまだ大学を出て2年しかたっていないので、頼りないものです。
 かばを作り始めたのは大学2年の終わりでした。もともと好きな動物で、ちょっと絵に描いてみようと動物園にスケッチに行ったのです。かばが水から上がるまでに2時間待ちました。エサの時間になってようやくプールサイドに上がったかばを見て私はあまりの大きさに驚き感動しました。想像以上にかばは大きく、何とも立派な姿でした。そして表情が笑っているように見えて、動物園での生活をそれなりに楽しんでいるようでした。かばのプールにたどりつくまでに見たほかの動物たちは、せまいオリの中で、うんざりして、退屈そうにしているので、気の毒で長い時間みていられませんでした。でも後日、本に出ていた写真で、他の動物園に移すために、子供を奪われたメスかばが、扉に乗りかかって、「返せ」と訴えている顔が笑っているようだったのを見た時は、胸が痛みました。笑っているように見えるだけで実際は違うんだと分かったからです。人は、人間の顔の表情に似たものを見ると、そのまま動物の気持ちにあてはめてしまうのかもしれません。
 かばの気持ちの良き理解者にはなれないと思いつつも、その姿や存在感にあこがれて、かばを作ってきました。かばはとても利口で、ゆったりとした存在です。日本ではたまたま、バカという言葉の逆さま語にあたるため、なんだかまぬけで、ずぼらなイメージが強いようですが……。かばはヒポポタムス(語源ギリシャ語 hippo(馬)+ potamus(川))といいますが、こちらはかの有名なヒポクラテス(ギリシャの医学者?)と響きが似ているために、とても威厳のある、賢い生き物を連想させるように思います。
 かばに限らず体の大きな動物は、それだけ脳も大きく、人間よりも多くの事柄を許容した、とても哲学的な生き物といわれています。動物園のプールの前で、「カーバ、バーカ」と呼びかける子供を見ると、いつもかばはばかではないよと話しかけたくなります。
1月末日 やまだ・みほ (かば製造業)
東武動物公園のかば舎はさすがに立派です。数年前までいたムー君の子かば時代を参考に、よく子かばを作りました。(今は長崎におむこさんに行ったようです)
ちなみに宇都宮動物園のわたる君には、前行ったとき、さわれました。エサやりもOKのめずらしい動物園です。
この表情のように本当に満足な気持ちで毎日を過ごしていることを願います。

●山田実穂
 略歴
1977年埼玉県生まれ。2002年筑波大学大学院修了。かばの彫刻を(いまのところ)専門に制作。日本各地で作品を発表中。
●インフォメーション
 山田実穂彫刻展
 なんば高島屋6階アートサロン
 2月11日(水・祝)〜17日(火)

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