2年ほど前、ある小冊子に私の印のことが載った。それを見た広島の婦人から印を作ってほしいと手紙が届いた。
4センチ角の印、3種類。それぞれウサギをモチーフにして言葉を入れてほしいという。私の中でも4センチは大きい。久しぶりに大きい印だなと石を磨きながら構想を練っていると2伸が届いた。5センチ角に変更してほしいという。5センチの印といえばすぐ押し方の難しさを思ってしまう。この大きな印を彫ることも大変だが、きっちり紙に押すというのは技術がいるものだ。以前も他の注文者に「大きいのは押すのが大変だから、小さい印の方がいいですよ」と言ってしかられたことがあったので、今回押すことは考えないことにした。 やはり大きい印はパワーがいるものだ。取り掛かろうとして一月、二月と延び延びになっていく。家人は「そんなに遅くなるのなら、いらないと言われるよ」と最もなことを言う。 そして一年がたち、また一年がたった。 その間「彫るのが遅れています。もしいらないと思われるのでしたら、お断りしても結構です」の葉書を数回送った。その度に「お待ちしています。楽しみです」の温かい返事が返ってきた。 そして2年以上経ちこの印が出来上がった。何しろ5センチは大きい。大きいというプレッシャーが遅らせたのかもしれない。
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