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篆刻石 雑感
※画像はクリックすると拡大画像を開きます。

 印材にする石はほとんど中国から輸入されたものである。その歴史も古い。専門的なことは他の文献を見てもらうとして、普段考えている石について、思うままに書いてみた。

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 篆刻の材料の中で、石が一番重要だ。とくに必要でない時でも、いい石が見つかると買っておくことにしている。それは、再びいい石に出合えるのはごく稀だからである。それだけ、いい石が少なくなってきたとも言えよう。

 見かけは普通でも、彫ってみるとひどい石も多い。一通り彫り終わってから印泥をつけようとすると、パキンと半分に折れたり、肝心の文字のところが欠けたりすることがある。これはヒビが入っていたり、砂の含有分がまったく感じられないほど、見ためはキレイな石なのにおかしい。だから、見かけだけで判断することは難しい。


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  ある時、1000本以上の石が必要になった。そうなるとお店で買うより、輸入元を直接訪ねて選ぶ方がよさそうだ。たぶん迷惑な話だろうが1000本もまとめて求める人もいないので、大目に見てくれたのだろう。そんなことを許してくれるお店もありがたい。

 たくさんの石の箱を積んでもらい、その石の中から良い石とダメな石とを選んでいく。その作業をしながら、10本のうち、良い石はせいぜい3本ぐらいだということが分かった。

 石の形を数多く見、長年彫りつづけていると、少しずつだが石の善し悪しが分かってくる。結果は1000本の中からかろうじて400本がOK、後はひどいものだった。年々、石の質が悪くなっている。もう中国では印材用の石が採れないのだろうか。ただカタチだけ取り繕って送り込んでいるのではないだろうか。良質なものが採れると骨董品的に扱われたり、特別なところで高価な取引をされているのではないだろうか。

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 先日、知人が大きな印材を持ってきた。「これは大事な人から名前入りでプレゼントしてもらったものだが、文字が気にいらないので、磨き直して新しい文字を彫ってほしい」と尋ねられた。私は快く「いいですよ、やってみましょう」と答えた。他人の彫ったものを直すことを嫌う篆刻家も多いが、私はまったく気にしない。
 その石はズッシリと重い、朱色が多い鶏血石(けいけつせき)だ。鶏血石とは、鶏の血のような鮮やかな朱が混じっている美しい石で、昔から高価なものだった。時々お店で見かけたことはあるが、手にとったことはなかった。

image数日後、前の文字を消してしまうために、石に水をかけながらサンドペーパーで磨いてみた。するとどうだろう、ひどい薬品の匂いが立ち込めてきたのだ。これは石でなく樹脂でできたものと分かった。なんということだろう、ニセ物なのだ。石の粉と顔料を固めて作るようだが、よく見ると色がケバケバしい。

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 「これが本物です」と巧みな売り込みに、日本人をはじめとする観光客がだまされて買っているのだ。たぶん「安くしますョ」などと言われたのだろう。少々お高めのものものを買うという、日本人の特徴を見抜いているのだろうか。本物をこの横に並べたらすぐに分かることだが、ニセ物だけだと一般の人には判断がつかないだろう。目にすることも少ないから尚更だ。
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