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展覧会案内ウィーン・スタイル ビーダーマイヤーと世紀末 生活のデザイン、ウィーン・劇場都市便り

ウィーン・スタイル

ビーダーマイヤーと世紀末
生活のデザイン、ウィーン・劇場都市便り


《椅子》1820年頃
アセンバウム・コレクション Asenbaum Collection,
©Asenbaum Photo Archive
※画像写真の無断転載を禁じます




パナソニック汐留美術館

東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4F
tel.050-5541-8600(ハローダイヤル)
2025年10月4日(土)〜 2025年12月17日(水)
前期 10月4日〜11月11日 後期 11月13日〜12月17日
※会期中一部展示替えあり
※11/13以降に再入場の場合は、半券提示で100円割引
※水曜休館、ただし12/17は開館
※土曜・日曜・祝日は日時指定予約(平日は予約不要)、9/22(月)10:00から予約受付開始
10:00〜18:00
※11/7(金)、12/5(金)、12(金)、13(土)は夜間開館、20:00まで
※いずれも入館は閉館の30分前まで
入館料:一般1,500円 65歳以上1,400円 大学生・高校生1,000円 中学生以下無料
※障がい者手帳を提示の方、および付添者1名まで無料

ホームページ:https://panasonic.co.jp/ls/museum/

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19世紀前半のビーダーマイヤーと世紀転換期という、ウィーンの生活文化における二つの輝かしい時代を取り上げ、銀器、陶磁器、ガラス、ジュエリー、ドレス、家具など、多彩な作品を紹介する展覧会が開催される。両時代の工芸やデザインに通底するのは、生活に根ざした実用性と快適さ、誠実で節度ある装飾、そして自然への眼差しと詩的な遊び心だ。これら両時代に共通する美意識を、相互比較や空間構成によって体感させる。

ウィーンは19世紀から20世紀初頭にかけて、独自のモダン・スタイルを築いた。オットー・ヴァーグナーが実用性と合理性を重視する「実用様式」を提唱し、その思想に共鳴した弟子ヨーゼフ・ホフマンらが推進したウィーン世紀末のデザインは、幾何学的で建築的な造形を特徴とし、実用性と快適さを実現する機能美が備わっていたといえるだろう。一方で、1920年頃には幻想的で装飾性豊かな作品も生まれ、一元的な様式にとどまらない多様な造形が広がる。

この世紀末のデザイン革新の背景には、19世紀前半のビーダーマイヤー様式への回帰がある。手工業の質の高さ、模倣ではない主体的なデザイン、自然モチーフへの親しみは、世紀末のデザイナーたちにとって「近代的な住文化の出発点」として賞賛された。過去の遺産を意識的に継承し、造形の基盤として参照しながら、より時代に即した造形に発展させることで独自の「ウィーン・スタイル」を獲得したのだ。

本展は、こうした「ウィーン・スタイル」のありようを、両時代のデザインや工芸作品はもちろん、グスタフ・クリムトの繊細な素描作品や、当時際立った存在であった女性パトロンや文化人の活動、また女性デザイナーたちの仕事にも注目することで、多面的に紹介する。さらに最終章では、世紀末ウィーンを越えてなお継承されるそのスタイルについて検証する。 テキスタイルデザイナー須藤玲子氏が率いるNUNOが、本展のためにデザインした織物を、作品の展示面に使用した特別な鑑賞空間も楽しみのひとつだ。