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天才と凡才の時代
PREVIEW

判型 : B6判 並製
頁数 : 272頁
定価 : 2,090円
発刊 : 2018年1月15日
ISBN : 978-4-87586-534-6 C0070





天才と凡才の時代
ルネサンス芸術家奇譚

秋山聰・著


ルネサンスを彩った天才から凡才まで、
80人の芸術家の数奇な物語


レオナルド、ミケランジェロ、ラファエロ――
ルネサンス期イタリアで光を放った天才たち。
そしてアルプスを越えればデューラー、クラーナハ、
ファン・エイクらの巨匠たちがいた。
しかし彼らならびたつ天才の陰には、数多の凡庸な芸術家の姿があった。
ルネサンスの時代、ヨーロッパを舞台に繰り広げられた
天才・凡才たちのアナザーストーリー。

◆本書紹介
ダ・ヴィンチ、ミケランジェロをはじめとする、ルネサンス期の巨匠たちに対する一般の関心度は高く、日本でも大規模な展覧会が頻繁に開催され、多くのギャラリーを動員している。
しかしながら、こうした巨匠が活躍したルネサンス期においては、いまだ「画家」あるいは「芸術家」という概念は確立しておらず、彼らとて職人、あるいは工房のアートディレクター的な認識であり、むしろ自らを「芸術家」として認知させようとする涙ぐましい努力があったことはあまり知られていない。
本書では、これらルネサンスの芸術家たち80名について、一人一点の作品を取り上げ、その作品をめぐるエピソードからルネサンス期の画家(職人)たちの、芸術家をめざす奮闘ぶりを紹介する。

◆登場する主な芸術家
レオナルド・ダ・ヴィンチ/ミケランジェロ/ラファエロ/ボッティチェッリ/パオロ・ウッチェッロ/アルブレヒト・デューラー/ルーカス・クラーナハ/ホルバイン/ヤン・ファン・エイク/ソフォニスバ・アングィッソラ/ロレンツォ・ギベルティ/ハンス・メムリンク/他

【目次】
【第1部】ルネサンスの光の中に
レオナルド・ダ・ヴィンチ 制作の遅れは芸術家の証?
ピエロ・デッラ・フランチェスカ 絵の中の注文主
ペルジーノ 注文主の希望に翻弄された画家
ジョット 敬虔な宗教画家の知られざる素顔
ラファエロ 機知に富む恋多き天才
マンテーニャ 古代彫刻に理想を見た北イタリアの巨匠
ボッティチェッリ 失われた古代名画の再現
フィリッポ・リッピ 恋におぼれた破天荒な聖職者画家
ミケランジェロ 聖母に刻む若き天才の自負
ティツィアーノ 年齢を偽ったイタリア・ルネサンスの老巨匠
ドメニコ・ベッカフーミ ジョット伝説を引き継いだ画家
ジョルジョーネ 彫刻に対する絵画の優越を説いた画家
パオロ・ウッチェッロ 遠近法を極めたルネサンスの偉才
アンドレア・デル・サルト 妻への愛で成功を棒にふった情深き画匠
ジェンティーレ・ベッリーニ スルタンに仕えたヴェネツィアのエリー
ト画家
フランチェスコ・スクァルチオーネ 「教育」という才能を発揮したマン
テーニャの師
ロッソ・フィオレンティーノ 人のつながりがもたらした幸運
ジョヴァンニ・ベッリーニ デューラーの筆を所望したイタリアの巨匠
フランチェスコ・デル・コッサ 報酬に異議申し立てをした画家の矜持
パオロ・ヴェロネーゼ 創作の自由を主張した気骨の画家
コスメ・トゥーラ 研修の旅に出た宮廷画家の目的
ドメニコ・ギルランダイオ 老人の遺影を描いた肖像画の巨匠
フラ・バルトロメオ 独自の人物表現を求めた修道士画家
フラ・アンジェリコ 一点の自画像に表された才能のひらめき
ブオナミーコ・ブッファルマッコ 悪ふざけが過ぎ巨匠になりそこねた画家
セバスティアーノ・デル・ピオンボ 成功と同時に絵を手放した画人
マルカントニオ・ライモンディ 卓越した複製制作者の権利
ジョヴァンニ・ジロラモ・サヴォルド 観る者を巻き込む名品
ビッチ・ディ・ロレンツォ・ディ・ビッチ 打ちすえられた聖人像
ウーゴ・ダ・カルピ 木版画家の唯一の油彩画
パオロ・ヴェネツィアーノ 軽んじられたヴェネツィア・ルネサンス絵画
の先駆作
パチーノ・ダ・ボナグイダ キリストの身体から延びるチューブ
ジョヴァンニ・フランチェスコ・カロート 子どもの落書きを描いた最古
の肖像画

【第Ⅱ部】アルプスを越えて
アルブレヒト・デューラー ドイツから来た若き名手の速筆
ルーカス・クラーナハ 制作をシステム化したドイツの匠
ハンス・ホルバイン(子) イギリス国王を魅了した北方ルネサンスの写実
画家
マティアス・グリューネヴァルト 名声に背を向け忘れられた謎のドイツ
画家
ヤン・ファン・エイク 宮廷で成功を収めた画家の自画像
ハンス・バルドゥンク・グリーン 祭壇画で成功を収めたデューラーの
愛弟子
シュテファン・ロッホナ ケルン市庁舎礼拝堂祭壇画を描いたシュテファン
ロヒール・ファン・デル・ウェイデン 聖人に自らを重ね合わせた画家
ミヒャエル・ヴォルゲムート デューラーの師となった大工房の主
フーホー・ファン・デル・フース 画業と信仰のはざまで精神を患った天才
ヤン・ホッサールト 君主の寵愛を受けた奇矯の宮廷画家
メルキオール・ブルーデルラム 宮中御用達の地位を得た画家
アルブレヒト・デューラー(父) 天才を育てた愛深き職人
ヨハン・ケーニヒ ミニアチュール画家の矜持
ヨハンネス・グンプ 一点の自画像に表われた才能のひらめき
ルーカス・フルテナーゲル マルティン・ルターの死顔を描いた画家
アルブレヒト・アルトドルファー 不可能な鳥瞰の歴史絵巻を描いた巨匠
ハンス・ショイフェライン 手抜き画家の渾身作
ハンス・デューラー 才気溢れる喧嘩屋の画家
ゲオルク・ペンツ デューラーの悲運の後継者
ロベール・カンパン コネで市外追放を免れたネーデルラントの匠
ウルス・グラーフ 軍人として鳴らした画家の諧謔精神
ベルナルト・ファン・オルレイ タペストリーの原画を本分とした画家
ヘラールト・ホーレンバウト 個性を抑えた宮廷画家の技量
ヘールトヘン・トート・シント・ヤンス 描かれた「洗礼者ヨハネの遺体
発見」
ハンス・メムリンク 工芸から絵画の時代への幕開け

【第Ⅲ

部】芸術家の矜持を胸に
ソフォニスバ・アングィッソラ 古代画家の再来を演じた女性肖像画家
ヤーコポ・デ・バルバリ 技量より学識を
ロレンツォ・ギベルディ コンペティションに勝利した気配りの彫刻家
聖エリギウス 聖人になった中世の金細工師
工匠としての神Deus Artifex 神の創造を冗談にした庶民の想像力
聖ヴェロニカの画家 ゲーテが嘆賞した作者名不詳の画家
ティントレッタ 巨匠を父に持った女性画家
アンブロシウス・ベンソン 手本素描帖をめぐって師匠と争った画家
アルベルティ 万能の天才が示した諧謔精神
ジュアン・ジルメール 営業活動で逮捕された平凡な写本画家
ランブール兄弟 公爵に寵愛された画家兄弟
ジャン・ポワイエ 仕事の速さゆえに詩人に愛でられた画家
ルーカス・ファン・ライデン 異教の教祖を描いた名匠
ハンス・グルデンムント デューラーの版画を勝手に模刻した印刷業者
ハンス・プライデンヴルフ 忘れられた初期ネーデルラント絵画の伝道者
ティルマン・リーメンシュナイダー 祭壇から追われたマグダラのマリア像
ミヒール・コクシー オリジナルと並び称された複製画
イェルク・ショーンガウアー デューラーに銅版画を手ほどきした金細工師
ヴォルフガンク・カッツハイマー 凡庸なれど街を愛し、街からも愛された画家
ゲアラクス ステンドグラスに刻まれた名前
アグネス・デューラー 天才を支え続けた悪妻(?)

【著者略歴】
秋山聰(あきやま・あきら)
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程満期退学。ドイツ・フライブルグ大学にて博士号取得。東京学芸大学助教授、電気通信大学助教授を経て、現在東京大学大学院人文社会系研究科教授。主な著書に、『デューラーと名声 芸術家イメージの形成』(中央公論美術出版、地中海学会ヘレンド賞、日本学術振興会賞受賞)、『聖遺物崇敬の心性史』(講談社メチエ、サントリー学芸賞受賞)、『西洋美術の歴史Ⅱ』(共著、中央公論新社)等。

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